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7 種

Auteur: 鈴田在可
last update Date de publication: 2026-04-21 17:06:28

「おばあ様は、フィル兄様が銃騎士になりたいと言い出した時に、許可を出されたじゃないですか! 『銃騎士隊との繋がりが増えるのは良い事だ』とも仰っていたじゃないですか!

 フィル兄様は大丈夫で、どうして私は駄目なのですか⁈

 フィル兄様は家を継ぐ必要がありましたが、私にはない…… 家を継ぐのはオル兄様。ならば、私は別の形で、この家を、この伯爵領を守りたいんです!」

 フィオナが銃騎士になることを許可しない発言をしたキャスリンに、フィオナが食ってかかる。

「お前は伯爵令嬢、フィオナ・キャンベルなのですよ。お前の人生を犠牲にする選択を、私は肯定できない」

 フィオナの情熱を、冷静さで受け止めるように、キャスリンは落ち着き払って言葉を紡ぐ。

 兄フィリップのフリをして生きるということは、その間のフィオナ自身の人生は希薄になる。

「お前もそろそろ婚約者を考えていかねばならない年頃です。令嬢の十代を舐めてはいけませんよ。数年出遅れただけで、良い嫁ぎ先はどんどんなくなっていきます。

 お前の言う通り、国のルールがどうあれ、私自身は女が銃騎士になっても構わないと思っているし、お前の身の安全が保証されるのであれば、銃騎士隊と紐付くことは、我が伯爵家にとっては『良き』ことでもあるわ。

 でも、仮に銃騎士になることを認めたとして、それはいつまでの話になるの? いつ、『令嬢のフィオナ』は帰って来るの?

 悲願叶ってシドを倒せたとしても、その後に伯爵令嬢に戻った時のお前には、一体何が残るの?

 貴族女性にとって、結婚できなかったということは、とても致命的なことなのよ」

「そのことなのですが」

 キャスリンが「結婚」の言葉を出してきたことで、ここぞとばかりにジュリアスが口を挟んだ。

「私とフィオナ様の婚約を認めていただけませんか?」

 ジュリアスの婚約許可願いに、キャスリンは目を見開き、扇子で口元を隠すのも忘れて、驚愕の面持ちでジュリアス極上美形の顔面をまじまじと見つめた。

 場を沈黙が支配する。

(おばあ様お願い! 認めてー!)

 フィオナはキャスリンに念を送りながら、ここが自分が銃騎士になれるかなれないかの分岐点だと感じていた。

「……いいでしょう」

(やったっ!!)

 婚約と言っても偽装婚約なのだが、この時フィオナは、ジュリアスと本当に結婚できるような錯覚を覚えるほどに嬉しかった。

「ただし条件があります」

 しかし女帝は生易やさしくはなかった。

「あなたは銃騎士隊二番隊の、『隊長代行』の役職に就いていらっしゃいますよね」

「そうです」

 ジュリアスは若くして二番隊のほぼトップに上り詰めるくらいに優秀だ。

「平民であっても、そこまで高名な方ならば、私の方で養子に入れる貴族家を探せます」

 現在、この国では身分違いの場合、婚約までは可能だが、結婚はできない。

 そのことからフィオナは、祖母が先を見据えて、ジュリアスの養子先についての話をするのかと思ったが、そうではなかった。

「あなた、うちに婿入りしなさい。一旦別の貴族家に養子として入った後、フィーと結婚して、キャンベル伯爵家の爵位を継ぎなさい」

 ******

 結論から言うと、フィオナが銃騎士になることは認められ、フィオナが退官するまでフィリップの死を隠し続けることに、キャスリンは同意した。

 しかし、「ジュリアスの婿入りと爵位継承」については、ジュリアスが「私にはとてもとても……」と遠慮がちに断ったことと、「それだとオル兄様とアリア義姉様の立場が!」と、この場に彼らがいなくてよかったと思うフィオナが反対したこともあり、キャスリンはその案を一旦は引っ込めていた。

 実は婚約式襲撃事件の後しばらくして、アリアはフィリップの子供を身籠っていることがわかり、帰国はせず、キャンベル伯爵領の地に骨を埋める覚悟を固めていた。

 アリアの妊娠がわかった時、腹の子はもしかしたらシドの子供の可能性もあって、伯爵家の中で秘密裏に激震が走ったが、生むか堕ろすかの究極の判断を下さねばならない中、そこに真実を見抜く『真眼』という不思議な能力を持つという、マグノリア・ラペンツ男爵令嬢がいきなりキャンベル伯爵家を訪ねて来て、「腹の子は人間で間違いありません」と断言した。

 獣人と人間との間に生まれた子供は必ず獣人になる。

 つまり、アリアの腹の中にいる子供は、シドの子供ではなくて、フィリップの子供であるという。

 伯爵家の中ではマグノリアの言うことは本当に正しいのかと心配する者もいたが、最終的にはキャスリンが、「何があっても私が責任を持つから生みなさい」と促したことで、アリアは出産を決意していた。

 アリアは死亡したフィリップとは婚約前だったので、このままでは未婚の母になってしまう。そこでキャスリンは、次期伯爵にする予定のオルフェスと結婚するようにとアリアに持ちかけていた。

 実はアリアがこの国に来て長兄フレデリクと付き合う前、オルフェスもアリアが好きだったらしい――という話を、フィオナはオルフェスの亡き異父弟キルファから聞いたことがあったので、アリアが了承さえすれば、子供がいても二人は結婚するのではないかとフィオナは思っている。

 そんな中、自分たちの(偽装)婚約で、上手くまとまりかけていた彼らの中を引っ掻き回すわけにはいかないと、フィオナは祖母を必死で止めた。

 すると祖母は、ジュリアスに爵位を継がせる代わりの条件として、「結婚したらジュリアスだけでもキャンベル伯爵領に住むこと」という条件を出してきた。

 それを聞いたフィオナは、『もしも万が一ジュリアスと本当に結婚できたとしても、私だけは安全な場所で暮らせとか言われて首都のタウンハウスあたりに出されて別居婚になる気がする……』と、ちょっとだけ心配になった。

 キャスリンがジュリアスを見る目には熱が籠もっていたので、『あ、これ彼に爵位を継がせるの全然諦めてないわ』とフィオナは悟り、たぶん祖母はジュリアスを伯爵領に繋ぎ止めることで、いつの日か爵位を継がせることを了承させるつもりなのかもしれないと思った。

 ここ十数年のキャンベル伯爵家の当主は亡くなってばかりなので、オルフェスや、アリアが生む子も亡くなる可能性がある。祖母はきっと様々なことを考えているのだろう。

 いつかは解消される婚約なので、心苦しいものはあるが――

 客間での話し合いが終わり、キャスリンはフィオナにはこのまま部屋に残るように言う一方、もう日が暮れることから、ジュリアスには伯爵邸に泊まるように勧めていた。

 ジュリアスが了承したのでキャスリンはギルバートに案内を申しつけていたが、ジュリアスが退出する直前に、祖母は「必ずフィーを守って欲しい」と告げた上で、こんなことも言っていた。

「フィーのような小娘が一人銃騎士になったところで、何が変わるのかはわかりません。ひょっとしたら、状況は何も変わらず、むしろ悪化する可能性もあります。

 けれど私は、フィーを銃騎士にする今回の一手が、ゆくゆくは、シドあの男を倒したいと願う私たちの悲願の花を咲かせる、種になれば良いと、心底願っています」

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     初めて結ばれて、海を見ながらプロポーズされた日から、もうすぐ三年が経過しようとしていた。「ジュリアス、あのね……」「うん? フィー、『おやすみなさい』かな?」 フィオナは恋人との時間を多く持つため、住まいを首都のキャンベル伯爵家のタウンハウスから、ジュリアスと同じ銃騎士隊員用独身寮に移していた。 夜、フィオナは隣のジュリアスの部屋にお邪魔して、朝までお邪魔を続けたかったが、読書に没頭しているらしきジュリアスは、エロ事よりも本の方が気になる様子で、その気ではないようだった。 ニコッと聖人のごとき清らかなる美しき笑みを向けられてしまうと、欲望をここで伝えるのも何だか違う気がして、フィオナは全身にくすぶる「今日は抱いてほしい」熱を、何とか抑え込もうと思った。 ジュリアスとは頻繁に体を重ねていたが、時々今回のように「エッチなことは全くしませんよオーラ」を出してきて、紳士対応をされてしまう時があった。「う、うん、おやすみ。また明日、ね」 フィオナは夜の挨拶をしてから、すごすごと、隣の広々とした貴族仕様の独身部屋に戻った。  ****** 三年前、男女の関係になった後すぐに、結婚を保留にしていたジュリアスの態度に変化が起こった。 いわく、すぐにでも結婚したいと。 しかし、そこから約三年経過しても結婚に至っていないのは、ひとえにフィオナ側に理由があった。 フィオナが銃騎士になったのは殺された家族の仇を討つためだ。あの獣人王と呼ばれているおぞましい赤髪の獣人を狩るまで。銃騎士を辞めるわけにはいかない。 結婚したらきっと子供も出来るのだろうし、銃騎士を続けるのは無理がある。ジュリアスからも、仕事中に一緒にいられるのは嬉しいが、危険がつきまとう仕事なのだからとそれとなく言われている。 危ない仕事を最愛の人にしてほしくないのはこちらも同じなのだが、銃騎士を相手に選んでしまった時点でそれは仕方のないことなのかもしれない。 いつまでも性別を偽り続けることはできない。 ジュリアスは無理を通して銃騎士になったフィオナの思いを汲んでくれて、「いつまででも待つ」と言ってはくれる。 国中の女たちが結婚したいと焦がれるような相手なのに、その男を待たせてしまっていることを申し訳なく思う。 どこかで区切りをつけなければいけないことは、フィオナもわかっていた

  • 男装令嬢の恋と受胎~国一番の顔面偏差値を持つ隠れ天敵な超絶美形銃騎士に溺愛されて幸せです~   30 結婚しようか 

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